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教員News(No.13)

作業療法学専攻
長寿者から学ぶもの(作業療法学専攻教員 北川公路)

東京都内に在住の100歳高齢者の方々を対象に健康長寿の要因を探るために、医学?看護学?心理学?栄養学などの立場から調査を行いました1)。その中の心理学のライフイベント(人生の出来事)研究を紹介します。100歳高齢者の方々に「人生のなかで一番重要な出来事は何ですか」と尋ねました。すると「太平洋戦争」「関東大震災」という回答が多くありました。

この結果のままだと健康長寿の要因を探ることはできません。我々の研究グループでは、この出来事をどのように対処したのか???ということを調べることができたら、これから経験するよい出来事やよくない出来事に遭遇した際の対処方法を100歳高齢者から学ぶことができるのではないかと考えました。この対処方法を学ぶために『百歳百話(日東書院刊)』2)の書籍をもとに説明します。この書籍は、西暦1900年前後に生まれ2000年前後に100歳になられ前述の研究にご協力くださった方々が100年間の出来事を思い返して話してくださったことをまとめたものです。

太平洋戦争や関東大震災などで大切なひとと別れることになったことやそれを境に生活が一変してしまったことなどが綴られています。遭遇した出来事を前にして、多くの100歳の方は「頑張るしかなかった」と語っていらっしゃいます。また、本文中に『戦争や関東大震災をはじめ、さまざまな苦労があったはずだが、自分の人生を振り返って「あまり辛いこともなかったですねえ」と笑う。この明るさが長寿の理由なのかもしれない。』という一節があります。

東日本大震災から3年が経過しました。被災地では「頑張っている」最中です。被災者になり「頑張るしかなかった」という言葉にはさまざまなことが含まれているものと想像できます。また、ひとは「頑張れ」と言われ励みになることもあれば、苦しくなることもあります。それでも、対処の方法は「頑張るしかない」のかもしれません。

この出来事を何十年後かに振り返ったとき、生かされた者としてどのように振り返ることができるのでしょうか。100歳まで生きた先達と同じように「頑張るしかなかった」と話したいものです。

出典
(1)平成13年度厚生科学研究費補助金(長寿科学総合研究事業)総括?分担研究報告書「百寿者の多面的検討とその国際比較」主任研究者 広瀬信義

(2)「百歳百話」 百寿者研究会編  日東書院(絶版)