文字サイズ
TOPICS&NEWS
365体育投注

新着情報

教員News(No.20)

作業療法学専攻
古い道具の記憶(浅野 朝秋)

 9月28日まで東北歴史資料館で開催されていた「家電の時代」という夏期特別展に行って来ました.子供時代,自分は父親の仕事の関係で,父方の祖父母や母方の祖母とも一時期同居した時期がありました.小屋や納戸,押入等から,ラジオやら和裁に使う道具やら古めかしい道具を探し出してきては「これ何?」と祖母達を質問攻めにした記憶があります.さぞかし「こんな古道具に興味を示すなんて,変な童だな」と思われたと思います.

 自分たちが懐かしさを体験しにきたのでしょうか,その展示では,孫とおぼしき子供を連れた年輩の方々を結構みかけました.多くの人が足を止めて,ちょっとした人だかりができていたのは,昭和50年頃の茶の間を再現したコーナーでした.解説員の方が黒電話を指して曰く「今の小学生の子は,この黒電話の使い方がわからないのですよ.つまりダイヤルを回すという発想が無くて,丸い穴が開いている数字の部分を一生懸命指先で押してるんですね」.

それを聞いて「いつの世も昔の道具に興味を示す変な子っているんだ」だと思いながら,もしその子の祖父母がその場面にいたら「こうやって指をかけて留め金のところまでダイヤルを動かすんだよ」と得意げにダイヤルを回している情景が浮かびました.


縁あって,私は長い間,認知症の方が多く利用している高齢者施設や病院で働く機会がありました.言葉でのやりとりは難しいほど重度な方でも,杵を渡せば力一杯臼に向かって振り下ろし,ペッタンペッタン餅つきしていました.それを見ていたスタッフから「すごいね」と賞賛の言葉をかけられると,いつになく嬉しそうな表情になっていたことを思い出します.

たとえ認知症が進行しても,使い慣れた道具を使う能力は保たれやすいことはよく知られています.ただし道具を使うためには,その道具が何なのかを正しく認識する必要があります.自分は,どのような条件ならば,認知症の方が認識しやすいのかについて,色々調べています.昔,祖母の家の納戸から持ち出した古道具を使いながら.